Uくんの話。

Uくん、とは私が高校生の頃好きだった人…というより、いいよね!とみんなできゃーきゃー騒いでいた男の子である。

 

Uくんはニューヨークからの帰国生で、物静かなのに、何故かいつもわいわいうるさい感じの男子に囲まれていた。

 

休み時間にしばしばひとりで「大学への数学」をやっていたのもクールだった。(数学。中学生の時は得意科目だったのに、高校生の頃にはすっかり数学迷子になっていたので、私はこの頃からすでに数学が得意な男の人にめっぽう弱いのだった)。

そして、すれ違うと柑橘系のいい香りがした。きっとコロンか何かをつけているに違いないと、同級生と噂していたものだ。

 

まあ、遠巻きに見てきゃーきゃー言っているくらいなので、クラスメイトとはいえ、まったく接点はなかったのだけれど。

 

しかし、文化祭の時のクラスの企画で(何だったかまったく思い出せないが)、当番制でチェックポイントに常駐する係を決めたところ、Uくんと2人きりで担当しなければならなくなってしまった。

 

当時の私は、今で言うところの完全なる「陰キャラ」だった(まあ、存在感が薄いといいますか…。でも、私のせいじゃないわ。ちょっと家庭環境が…もごもご)。きっとその時間中、気まずいだろうとUくんに非常に申し訳なく思っていたのだが。

 

当日、廊下にパイプ椅子を二つ並べて私と向き合ったUくんは、自分の話も適度に交えながらも、私にも色々と話題を振ってくれて。まったく気まずさを感じずに過ごすことができたのだった。

 

紳士だ…!

 

緊張していたのもあって、その時に何を話したのかまったく思い出せないのだが(もったいない)私の中でUくんの株はさらに急上昇した。

 

その後、修学旅行で同じ班になったり、スペイン語のクラスが同じだったりしたけれど、結局ひとことも言葉を交わすことはなかった。でも、文化祭の時に話せたことは、なんだかいい思い出として残っていたりする。

 

スペイン語の授業中にやったproject(プロヘクト)で、UくんがLet It Beを弾き語りしてたのも何故かふと思い出す。彫刻みたいなUくんの顔と、クールなのに冷たさを感じさせない、その柔らかい雰囲気のことも。

 

かっこいい、とか顔が好み、とか、人を好きになるポイントはいくつもあるけれど、結局一番大切なのは話していて楽しい、ということだろう。たとえ、年老いて容姿が変わっても、肉体的快楽を分け合うことがなくなっても。最後に残るのはきっと会話の相性、なのだ。きっと。